クラトニア評議会物語part4

『手紙』
30年、国家間の付き合いは復活しないものの、2年前よりはじょじょに多方面で回復していた。
私はかろうじて弁護士を続けていたが、ここ2年は仕事は多くなかった。最初に住んでいた家賃の高いマンションから、
安いアパートへと引っ越していた。路地の多い郊外のこの町になじんだレンガ造りで、内装も洒落ていたが、狭かった。
ラニア労働者党政権は、雇用回復や社会保障の充実など色々手を打ったが、あまりうまくいかず、ドゥーク・パーチノッティの
政界引退の噂とあいまって、急激に国民の支持を失っていった。クラトニア人は、自分達の国の貧弱さに絶望した。
私もその一人であった、今まで私の人生の支柱としていた、理想を叩き壊される思いだった。
そんなある日、私はいつもどおり気怠い気分で目が覚め、水で顔を洗い、不味いコーヒーを飲み、地味なスーツに着替え、
自分の部屋から出た。アパートの私のポストに一通の手紙が入っていた。中身を確認せずそれをカバンの中に入れ事務所に向かった。
私がその手紙を開いたのは事務所からの帰宅後だった。