クラトニア評議会物語part1

『立法評議会へ』
 この建物はいつも不思議に思う。
外観はとても大きく見えたが、中はコンパクトである。
評議場は、設計者の趣味だろう、近世芸術の傑作であったクラトニア彫刻がふんだんに使われている。
また、演壇に登壇した者の発言がよく響くよう天井は丸く反響するように作られている。
それにしても、椅子と椅子の間隔が狭くとなりの議員と肩がぶつかってしまう。
ロシリアのゴール裏かのように我々は密集して、議論しなくてはならないのだ。
私はこのような評議場に、開会の2時間ほど前に入場した。
 あちこちで、すでに白熱した議論が起こっていた。
今日の議題のこと、昨日の審議についての再考、明日の審議の予習、または雑談。
同じ党員同士は当然だが、他党との党員の間でも議論はあった。
そもそもクラトニアの現在の評議会の仕組みの骨子は、数百年前に出来上がった。
レイリルの議会制を見習い我王国でも元老院を立ち上げようという気運が高まった。
それを推し進めようとしたのは貴族と市民階級である。国王を称えながらも、国王を厄介者にしているその貴族と市民だ。
設立した元老院は国王から多くの特権を奪った。それが現在の立法評議会の骨子である。
当時も、審議の開会まで、このように早くから入場し、あちこちで議論していたという。
そしてそこで思想や方向性の合う者同士がチャレブリクラブやフェローネ派など(現在でいう政治結社のようなもの)
が自然と生まれていた。
 お、いつもの議論仲間が既に椅子に座って議論を始めていた。
友人で、同じクラトニア国民運動党のボンジョーノ・フェラーナとアレサンドロ・フィーネが居た。
そしてもう一人座っている。同じ国民運動党の議員であるのはわかったが、しゃべったことのない人だ。
ボンジョーノは私を発見し、声をかけた。
「やあ、ピケ。遅いじゃないか。こちらはパスクファーレ・トラニエッタ氏だ」
「どうも、クロントーネ州第8管区選出のピケ・ダネンツィオです」
「私はソルドニア州第2管区選出であります。牧師でした」
私達は、お互いに情報を公開し、数分で打ち解けた。
そして話は今日の議題のことになっていた。
今日の議題は、第二艦隊創設についてである。クラトニア国民運動党が外洋の艦隊創設についての提案をまとめた。
我々も骨子案に目を通しある程度理解している。今回の目玉、というより議論の中心は軽空母建設についてだ。
軽空母の建設は、相当な技術と金と人を使うもので、そう簡単にいくものではない。
「人民ファッショのやつ等は当然賛成を表明するだろう、問題は労働者党か」

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てけとーに感想コメしてw(忙しくなかったら